東京高等裁判所 昭和24年(新を)1445号 判決 1949年11月18日
被告人
菅原芳太郞
主文
本件控訴は之を棄却する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
前略
弁護人の控訴の趣旨第一点に対する判断
凡そ証拠の取捨は裁判官の自由な判断に委せられて居り其の孰れを眞実に合致するものであるとして採用すべきかは、裁判官の裁量に依るべきものとする。記録を査閲するに原審が被告人の原判示犯行を認定するに当り、被告人に対する司法警察員名村勘三郞作成の供述調書を証拠として引用して居ることは、所論の通りであるが右供述調書が弁護人主張の如く巡査より暴行を受け弁解の余地なく專ら自白を強要せられた以後作成せられたものであつて任意に爲された供述に基き作成せられたものではないとの事実、本件記録並原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実に徴するも之を認め難く却つて右供述調書の内容を檢討すれば逐一詳細に当時の事情を供述して居り毫も強要に依り爲された供述とは認めることが出來ない。從つて右供述調書は証拠能力に於て何等欠くる所なく、原審が被告人の犯行を認定する一資料として該供述調書を引用したのは毫も違法の廉がない、所論は結局原審の証拠の取捨を論難するもので原判決には、弁護人主張の如き理由不備、理由齟齬等の違法はない。論旨は理由がない。
以下省略